AI がコードを書く時代に「しゃべれるエンジニア」を求める理由
どうも、小笠原です。今日は、僕がメンバーに口酸っぱく言い続けている話をします。
「これ、自分が書く意味あるのか?」
最近、AI コーディングツールを使い始めたエンジニアが増えていると思います。Cursor、Copilot、Devin。使ったことがある人なら、たぶん一度はこう感じたことがあるんじゃないでしょうか。
「これ、自分が書く意味あるのか?」
僕の周りでも、この感覚を持つエンジニアが増えています。
僕はこの感覚、正しいと思っています。コードを書くだけのエンジニアの価値は、これから確実に変わる。でも、エンジニアの価値が「なくなる」とは思っていません。変わるんです。そして、その変わり方がとてつもなく大きい。
Peter Thiel の Math vs Word
数あるアメリカテック企業に投資をして成功させてきた Peter Thiel(ピーター・ティール)が、この短い動画で言っていることを端的にまとめると、こうなります。
- AI の進歩は、語学力よりも数学力に大きな影響を与える
- シリコンバレーのパワーバランスが変化する
- プログラミング能力はこれまで優先されてきたけれど、AI にとっての事例になるだけのキャリアは逆転する可能性が高い
つまり、Math(数学・コーディング)の人が、Word(言語・コミュニケーション)の人より深刻なダメージを受ける。
これを聞いたとき、僕は「ああ、やっぱりそうだ」と腹落ちしました。
なぜなら、僕自身が法学部出身で、コードを書けないところから IT 企業の経営をしてきた人間だからです。言語力がいかに武器になるかは、身をもって知っている。
産業革命は「言語の逆襲」に向かっている
ここで少し大きな話をさせてください。
| 産業革命 | 時期 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 第一次産業革命 | 1760 年代〜1830 年代(約 70 年) | 蒸気機関の発明と改良、紡績機や力織機 |
| 第二次産業革命 | 1870 年代〜1914 年(約 40 年) | 電気の実用化、内燃機関、通信技術 |
| 第三次産業革命 | 1950 年代〜2000 年代(約 50 年) | コンピューター、インターネット、デジタル技術 |
| 第四次産業革命 | 2010 年代〜現在 | IoT、AI、ビッグデータ、ロボット工学 |
産業革命の歴史を見ると、約 50-70 年の周期で動いていることがわかります。
そして 2045 年の シンギュラリティ(技術的特異点) まで、僕たちはいま折り返し地点にいる。
第三次産業革命でコンピューターが登場し、エンジニアリングが世界を支配しました。コードが書ける人間が経済の中心に立った。シリコンバレーはまさにその象徴です。
でも第四次産業革命のコアテクノロジーである AI は、 LLM(大規模言語モデル) です。文字通り 言語 モデル。
つまり、インターネット時代の後半は、エンジニアリング優位ではなく 言語力の逆襲 の期間に入ると僕は考えています。
コードを書けることの希少性が下がり、言語で的確に指示・構造化・説得・交渉できることの希少性が上がる。10 年、20 年かけて、このシフトは確実に進む。
「しゃべれるエンジニア」とは何か
僕がいま、20 代の若手メンバーに絶えず伝えているのは、これからうちのいかなるメンバーも しゃべれるエンジニア になって欲しいということです。
しゃべれるエンジニア = Math & Word。ロジカルな計算ができて、話せる人。
具体的に言うと、こういう人です。
- コードは書ける。でも、要件定義も顧客折衝もできる
- 技術的な判断ができる。でも、それを非エンジニアにも伝えられる
- AI ツールを使いこなせる。でも、AI に何をやらせるかを言語で定義できる
例えば、人の上に立ったことがあると、長ったらしい文章で指示するより、たったひとこと、意味のわかる日本語で適切に、迅速に指示する力がどれだけ大事かを実感すると思います。
エンジニアの方なら、人に要件を正しく伝える力がどれだけ貴重かも、身をもって感じているんじゃないでしょうか。
何かを的確に指示する力がなければ、AI も動きません。
なぜ「今」なのか
この話を 5 年前にしても、たぶん誰もピンと来なかったと思います。
でも今は違う。Cursor や Copilot でコードを書くことが日常になり、AI がコードを書く未来がもう目の前にある。エンジニアの間でも「コーディングだけでいいのか」という空気は確実に広がっています。
僕が見ている景色はこうです。
これから 10 年で、「コードが書ける」はスキルではなく前提になる。ちょうど「パソコンが使える」が 20 年前はスキルだったのに、今は履歴書に書くまでもないのと同じように。
そのとき、エンジニアの価値を決めるのは何か。
言語力 です。
要件を定義する力。人を動かす力。AI に的確に指示する力。事業の文脈を理解し、技術を社会に接続する力。
僕はそのように AI という LLM で動く客体を通して初めて言語力は定義され、 しゃべれるエンジニア が具体的になってくると思っています。
つまるところ、言語でできた LLM である AI を、同じく言語を用いてうまく使いこなし社会に役立てていくことが、インターネット時代の人類の後半の仕事だと考えています。
僕たちが求めているもの
うちの会社では、国語力に自信を持ったメンバーの採用を積極的に行っています。
「コードを書くだけ」ではない環境で、技術と言語力の両方を伸ばしたい人。「何を作るか」を自分で決められる側に行きたい人。AI 時代に自分のキャリアをどう設計するか、真剣に考えている人。
そういう人と一緒に走りたいと思っています。
しゃべれるエンジニア が、これからの 10 年を作る。僕はそう確信しています。